尿路感染症は抗菌薬投与前にカテーテル尿・中間尿を確保する
UTIの確定診断はカテーテル尿・中間尿の培養だけで成立する。バッグ尿は培養に使えない。抗菌薬投与前の検体確保が大原則。
始める前に
- 生後90日以下、とくに60日以下のwell-appearing発熱乳児では、本ノートの尿検査所見だけでUTIの有無を判断してはならない。菌血症・細菌性髄膜炎の合併評価を含む広域ワークアップが別途必須
- 排尿が自立していない乳幼児はカテーテル尿、自立している患児は中間尿で採取する。パック尿は定性検査には使えるが培養診断には用いない
- 抗菌薬投与前の採取が必須。ill-appearingで即時投与が必要な場合でも、投与前にカテーテル尿を確保してから投与する
手順
- 1
尿定性(亜硝酸塩・白血球エステラーゼ)でスクリーニングし、いずれか陽性なら培養(カテーテル尿/膀胱穿刺)に進む
- 2
UTIの診断は、発熱などの臨床症状+尿検査の異常所見(膿尿・細菌尿)+カテーテル尿または中間尿での有意な単一菌種の検出(10⁴〜10⁵/mL以上、AAP基準は≥50,000 CFU/mL+尿所見異常)の3条件がそろって確定する
- 3
初発UTIは大腸菌を標的として、地域のアンチバイオグラムを参考に第1〜3世代セフェム系薬を選択する。Enterococcus属を否定できない場合はアンピシリンとアミノグリコシド系薬の併用も考慮する
- 4
発熱を伴う初発UTI全例に腎・膀胱超音波を行う
- 5
VCUGはエコー異常・非典型例・反復性有熱性UTIに限定して行う(ルーチンでは推奨しない)
- 6
DMSAでの腎瘢痕評価は有熱性UTI後4〜6カ月あけて実施する
- 7
発熱を伴う小児UTIの抗菌薬投与期間は7〜14日間を原則とする
やってはいけない
- パック尿を培養検体として提出しない(コンタミネーションが多く培養診断には用いるべきではない)
- 尿路奇形を伴わない初発UTI、VUR I〜II度に対するルーチンの予防抗菌薬投与をしない
- 初発の有熱性UTI全例へのルーチンVCUGを行わない
- 亜硝酸塩陰性だけでUTIを否定しない(乳児は膀胱内滞留時間が短いため偽陰性になりやすい)
- 膿尿がないことだけでUTIを否定しない(NICE・本邦GLは「膿尿なし=UTI除外」としない立場)
- 症状を伴わない無症候性細菌尿への抗菌薬治療をしない(妊婦・泌尿器科的処置前を除き推奨されない)
- 急性期(発熱から1週間以内)のDMSAで腎瘢痕を評価しない(一過性の取り込み低下と真の瘢痕評価を混同するため)
- 3カ月未満の乳児で髄膜炎の合併が疑われる場合、髄液移行性が不十分な第1・2世代セフェム系薬やアミノグリコシド系薬の使用可否を考慮せずに選ばない
- 割礼を前提とした欧米の性差リスク層別をそのまま持ち込まない。割礼が一般的でない本邦では男児の方が女児よりUTIが多いとの国内報告があり、性別のみでハイリスク群から除外しない
終わったあと
- 治療後、次に熱が出たときは早め(目安48時間以内)に受診するよう伝える
- 抗菌薬を始める前に採尿する理由(あとから正確に診断するため)を保護者に説明する
- 繰り返す場合や超音波検査で異常が見つかった場合は、追加の検査(造影検査や核医学検査)を検討することがあると説明する
この場で持てない・送る
- 生後3か月(90日)未満の赤ちゃんが38℃以上の熱を出したときは、月齢だけで早めの受診が必要
- お薬を始めて2日(48時間)経っても熱が下がらない、またはぐったりして元気がない場合は受診
- 要確認:小児科外来でのカテーテル尿採取の実施体制(実施者・鎮静の要否・年齢下限)
- 要確認:尿定性・尿沈渣・尿培養の院内提出フロー、迅速検査(尿定性即日結果)の対応可否
- 要確認:VCUG・DMSA腎シンチグラフィの依頼先(放射線科/小児泌尿器科との連携先)、予約から実施までの標準的な待機期間
- 要確認:抗菌薬エンピリック選択(院内採用薬・当院または地域のアンチバイオグラム)
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。