じんましんとアナフィラキシー

じんましんとアナフィラキシー

アレルギー・皮膚β版・逐条レビュー継続中

2026-07-31更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

家族説明を開く

30秒要約

  • 皮膚だけなら抗ヒスタミンでよい。気道・循環・反復嘔吐が混ざったらアナフィラキシー。
  • 蕁麻疹が強いからステロイド、ではない。アドレナリンを遅らせない。
  • 用量は書かない。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
119呼吸苦、声のかすれ、ぐったり、反復嘔吐を伴う全身反応家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急急速拡大、口唇腫脹、症状の再燃家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日皮疹のみで活気あり説明して帰宅可

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. 皮膚だけか全身かを分ける。
  2. 全身ならアドレナリン(施設)。抗ヒスタミン先行はしない。
  3. 皮膚だけなら観察と家族説明。
  4. 二相性の説明を一言。

家族に渡す一文

「赤いぶつぶつだけでは、まず様子を見ることが多いです。息が苦しい、声がおかしい、ぐったり、吐いてぐったりは別物です。そのときは119。」
https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/蕁麻疹とアナフィラキシーについて_患者説明_2026-07-30.html

エスカレーション

  • アナフィラキシー → 119 / 上級医

出典

  • Family Guide urticaria-anaphylaxis と整合

計算

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
計算

アドレナリン筋注量・エピペン区分

kg

大腿部中央の前外側に筋注(殿部・上腕皮下は吸収が不確実で不可)。投与時刻を記録し、治療抵抗性なら5〜15分毎に反復する。「1回打ったら終わり」ではない。

いつ使う

アナフィラキシーを疑った時点で直ちに。診断は「皮膚粘膜症状+呼吸/循環/消化器のいずれか」または「既知アレルゲン曝露後の急な血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状」。体重が分かっていれば年齢区分より体重換算(0.01mg/kg)を優先する(肥満・低体重児で年齢区分と実体重が乖離するため)。

落とし穴
  • エピペンには体重15kg未満の承認用量区分が無い。15kg未満への0.15mg処方は適応外使用にあたり過量投与のおそれ — アンプルでの用量調整を検討する
  • 逆に体重が増えた患児の処方が0.15mgのまま更新されていないかを確認する
  • 投与部位の誤り(殿部・上腕皮下)は吸収が不安定・遅延する
  • 症状消失直後の帰宅 — 二相性反応は小児で最大11%、その約半数が6〜12時間以内。複数回投与例・重症例・投与が遅れた例では観察を延長する
  • エピペン処方だけで終わらせない。実技指導と学校・保育所の生活管理指導表までがセット
次の一手

投与後は仰臥位+下肢挙上、酸素・輸液路の確保、院内観察へ(本シート§2)。βブロッカー投与中でアドレナリン反応不良ならグルカゴンを考慮(小児20〜30μg/kg・最大1mg)。帰宅時はエピペン処方+実技指導+生活管理指導表まで。

出典

アナフィラキシーガイドライン2022(日本アレルギー学会)/エピペン注射液0.15mg・0.3mg 添付文書(2026年3月改訂 第6版)の用法・用量および警告(9)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

判定

年齢別のバイタルと低血圧の閾値

回/分
/分
mmHg

年齢を入れると基準が出ます

    呼吸数60回/分以上・脈拍160/分以上は月齢によらず異常とされる。数値が基準内でも、陥没呼吸・鼻翼呼吸・呻吟・活気や哺乳の低下といった所見を優先する。血圧低下は代償が破れた後に現れる遅い指標で、正常でもショックを否定しない。

    いつ使う

    年齢を入れると、その年齢帯の呼吸数の生理的範囲と、低血圧とみなす収縮期血圧の閾値が出る。実測値も入れると基準と突き合わせる。

    落とし穴
    • 低血圧の定義は年齢の関数:乳児〜10歳以下は収縮期 [70+(2×年齢)] mmHg未満、成人は90mmHg未満。または平時比30%超の低下。年齢を当てはめずに「90未満」で判断すると、年少児の低血圧を見逃す
    • 呼吸数の生理的範囲は年齢で大きく違う(新生児30〜60/乳児30〜40/幼児20〜30)。成人の感覚で「多い」と判断しない
    • 細気管支炎では呼吸数60〜70回/分以上が重症化のサインとされるが、研究によって一貫しない
    出典

    低血圧の定義はアナフィラキシーのシート(血圧低下の定義)、呼吸数の年齢帯は気管支喘息発作のシート(年齢別標準呼吸数)と急性細気管支炎のシート(生理的範囲・60回/分以上は異常)。いずれも正本の記載。

    参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

    計算

    初期輸液・ボーラス量(場面別)

    kg

    場面

    この道具の目的は量を出すことではなく、場面を取り違えないこと。同じ「初期輸液」でも 10mL/kg と 20mL/kg が場面によって使い分けられており、量そのものよりどの場面かの判断が先にある。とくにショックでないDKAに 20mL/kg を急速投与すると脳浮腫のリスクを上げる。実施は院内プロトコルに従い、医師が判断する。

    いつ使う

    体重と場面を選ぶと、正本が挙げている初期輸液の量と投与時間が出る。「ショックなら20mL/kg」と丸暗記していると、DKA・アナフィラキシーで量も時間も変わることを見落とす。

    落とし穴
    • 10mL/kg と 20mL/kg は矛盾ではなく場面の違い。どちらか一方を既定値として覚えない
    • 敗血症性ショックでは J-SSCG2024 が10〜20mL/kg ずつ反復し、反応を評価する形をとる。1回で決め打ちにせず、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する
    • アナフィラキシーのガイドラインは成人量(総量1〜2L)が先に目に入る書きぶりになっている。「1〜2L」は成人の総量目安で、小児にそのまま当てはめない
    • 胃腸炎で使う「下痢1回ごとに10mL/kg追加(上限240mL/回)」は経口の追加量であって、ここでいう静脈内ボーラスとは別物
    • 維持輸液(Holliday-Segar)とボーラスは別の話。ボーラス後の維持は別に計算する
    出典

    ショック時20mL/kg=本サイト「経口補水・外来輸液」「血液ガスの読み方」。敗血症性ショック10〜20mL/kgずつ反復=J-SSCG2024 小児章。アナフィラキシー小児10mL/kg=日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022(図12ステップ8・p19、「4 症状別の治療/補液」p24)。DKA=ISPAD 2022 および 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 2024コンセンサスガイドライン第9章。ショックでない重症発熱性疾患にルーチンのボーラスを行わない、および最初の1時間の合計上限(40〜60mL/kg)=JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 p.200-201「8 ショック」(原文PDFで直接確認・2026-09-13)。いずれも本サイトの該当シートに一次出典のURLを載せている。

    参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

    処方

    処方

    処方の考え方

    アナフィラキシーを疑った時点でアドレナリン筋注が第一選択。用量は上の計算ツールで出す。ここはその周りの手当て(体位・酸素・輸液・反復・反応しないときの分岐)を置く。

    病態

    抗ヒスタミン薬・ステロイドをアドレナリンの代わりに先行投与して様子を見ない。これらは第二選択薬であり、投与の遅れが死亡リスクに直結する(医療事故調査データでも指摘されている)。H1・H2抗ヒスタミン薬の急速静注は血圧低下を、グルココルチコイドの急速静注は喘息発作等の過敏症状発現を起こしうる。症状出現時に急に立位・坐位をとらせない。蕁麻疹単独例へのI型アレルギー検査・一般生化学検査のルーチン実施も避ける。

    この数字の意味

    体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

    薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

    参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

    詳細リファレンス10章(正本より)

    出所: 正本「蕁麻疹とアナフィラキシー_2026-07-30.md」(起草→敵対的検証→一次資料照合→独立再検証済み)。同期日: 2026-08-14。
    用量・基準は「考え方」の記載であり、適用前に一次資料と院内採用・添付文書を確認すること。「医師確認事項」に残る論点は未確定。

    • 区分: 外来編/疾患別ワークフロー
    • 記録日: 2026-07-30
    • 状態: 下書き(要・本人確認)
    • 対象: 小児外来(愛育病院)

    ⚠ 本ファイルはAIが文献ベースで起草した下書き。最終的な臨床判断は医師(岡本)が確認して確定する。用量は体重換算の「考え方」のみ記載し、個別患者値は書かない。

    医師確認事項(要・岡本判断)

    敵対的検証で指摘された論点のうち、AIが一方的に確定させず岡本の判断・実地確認を要するもの。

    • HAE等ブラジキニン起因性血管性浮腫はアドレナリン・抗ヒスタミン薬・ステロイドいずれにも反応しない(1章・4章に追記)。蕁麻疹・掻痒を伴わない孤発性の喉頭浮腫でアドレナリンに反応しない場合にC1-INH製剤・専門医へエスカレーションする一文を加えたが、愛育病院でのC1-INH製剤の採用・院内在庫・実際の紹介ルートは未確認。検証者指摘(critical): この一文が無いと、反応しない喉頭浮腫を「反復投与すればよい」通常症例として扱ってしまい窒息死につながりうる。
    • 乳児の非典型的アナフィラキシー像(1章に追記): 哺乳不良・持続啼泣・活気低下・嗜眠・蒼白のみで発症する乳児例をレッドフラグに加えたが、この文言・閾値が愛育の実診療・トリアージ運用にそのまま馴染むかは要確認。検証者指摘(medium): 既存の記述は自ら症状を訴えられる年齢層の表現に偏っており、乳児の非典型像が見逃されるリスクがある。
    0. 一目でわかるフロー
    受診(蕁麻疹・皮疹+その他の訴え)
      → レッドフラグ評価(アナフィラキシー診断基準に該当 → 即アドレナリン筋注、様子見しない)
      → 重症度・病型の判定(アナフィラキシーのグレード分類 / 蕁麻疹の病型分類)
      → 検査(急性期は臨床所見で診断、誘因確定検査は後日)
      → 治療(アナフィラキシー=アドレナリン第一選択/蕁麻疹単独=抗ヒスタミン薬第一選択)
      → 二相性反応を想定した院内観察(4〜6時間、リスクありなら最大24時間)
      → 再診・帰宅指導・エピペン処方・食物アレルギー精査への橋渡し
    1. レッドフラグ(見逃し厳禁)
    • 「2. 重症度・病型の判定」の診断基準1・2のいずれかを満たす時点でアナフィラキシーとして扱い、即アドレナリン筋注。蕁麻疹(皮膚症状)の見た目の軽さで判断しない。
    • 呼吸器症状: 呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、嗄声、犬吠様の咳、嚥下痛、SpO2低下。
    • 循環器症状: 血圧低下、頻脈または徐脈、筋緊張低下(虚脱)、失神、蒼白、失禁、意識レベル低下。
    • 喉頭浮腫を示唆する所見(嗄声・嚥下痛・吸気性喘鳴)は気道閉塞に直結するため最優先で評価する。
    • 皮膚症状を伴わない(蕁麻疹が出ていない)まま血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状だけが急速に進行するケースがある。既知アレルゲンへの曝露歴があれば皮疹なしでもアナフィラキシーとして対応する。
    • 抗ヒスタミン薬・ステロイドを先に投与して反応を「様子見る」対応はしない。医療事故調査・支援センターの院内調査では、アナフィラキシーによる死亡12例全例で、抗ヒスタミン薬・ステロイドを先行してアドレナリン投与が遅れたことが背景にあったと報告されている(出典7)。
    • 二相性反応(後述)のリスクがあるため、初期対応で症状が消えても院内観察を打ち切らない。
    • 気管支喘息(特にコントロール不良)の既往がある場合は重症化・致死のリスクが高い。軽度の皮膚症状に見えても閾値を低くしてアドレナリン投与・入院を検討する(出典8)。
    • 乳児は呼吸困難・血圧低下を自ら訴えられない。哺乳不良・持続的な啼泣・活気低下・嗜眠・蒼白のみで発症することがあり、既知アレルゲン曝露歴があればこれらの非典型像もアナフィラキシーとして評価する。⚠要医師確認(出典1)
    • 蕁麻疹・掻痒を伴わない孤発性の血管性浮腫(特に家族歴あり・ACE阻害薬内服歴あり)で喉頭浮腫がありアドレナリン筋注に反応しない場合は、HAE等ブラジキニン起因性を疑う。アドレナリン・抗ヒスタミン薬・ステロイドはいずれも無効なため、反復投与で様子を見ず、C1-INH製剤・専門医(アレルギー科/小児科上位施設)へ速やかにエスカレーションする。⚠要医師確認(出典9・10)
    2. 重症度・病型の判定

    アナフィラキシーの診断基準(アナフィラキシーガイドライン2022、2023年3月修正版)

    以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い。

    基準1: 皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、瘙痒または紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分〜数時間で)発症し、さらに少なくとも次の1つを伴う場合。

    • A. 気道/呼吸: 重度の呼吸器症状(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)
    • B. 循環器: 血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)
    • C. その他: 重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])

    基準2: 典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状(吸気性喘鳴、変声、嚥下痛など)が急速に(数分〜数時間で)発症した場合。

    • 血圧低下の定義: 乳児・10歳以下の小児は収縮期血圧が「70+(2×年齢[歳])」mmHg未満、成人は収縮期血圧90mmHg未満、いずれもベースライン値に比べて30%を超える収縮期血圧の低下があれば該当。

    (出典1、修正2023年3月1日版で基準1のAが「呼吸不全」から「重度の呼吸器症状」に文言修正されている)

    アナフィラキシーの重症度分類(グレード)

    器官症状の重症度分類(アナフィラキシーガイドライン2022 表11、Yanagida N et al. Int Arch Allergy Immunol. 2017;172:173-82 に基づく)を参考に、最も高い重症度を示す器官の重症度で判定する。

    症状領域グレード1(軽症)グレード2(中等症)グレード3(重症)
    皮膚・粘膜部分的な紅斑・蕁麻疹・膨疹、軽い瘙痒(自制内)全身性の紅斑・蕁麻疹、瘙痒(自制外)、顔全体の腫れ同左(グレード2以上)
    消化器弱い腹痛、嘔気・単回の嘔吐/下痢強い腹痛(自制内)、複数回の嘔吐/下痢持続する強い腹痛、繰り返す嘔吐・便失禁
    呼吸器間欠的な咳嗽・鼻汁・鼻閉断続的な咳嗽、聴診上の喘鳴・軽い息苦しさ明らかな喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ、SpO2≦92%、嗄声、嚥下困難
    循環器なし頻脈(+15回/分)、血圧軽度低下、蒼白不整脈、血圧低下、重度徐脈、心停止
    神経元気がない眠気、軽度頭痛、恐怖感ぐったり、不穏、失禁、意識消失

    (出典1)

    蕁麻疹の病型分類(蕁麻疹診療ガイドライン2026・第4版、表2を外来向けに簡略化)

    大分類主な病型
    特発性の蕁麻疹急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)/慢性特発性蕁麻疹(6週間超)
    刺激誘発型(アレルギー性)食物・薬剤・虫刺傷等によるI型アレルギー性蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシー[FDEIA]を含む)
    刺激誘発型(非アレルギー性)NSAID誘発蕁麻疹、物理性蕁麻疹(機械性・寒冷・日光・温熱・遅延性圧・水)、コリン性蕁麻疹、接触蕁麻疹
    血管性浮腫マスト細胞起因性(蕁麻疹合併しやすい)/非マスト細胞起因性(ブラジキニン起因性・遺伝性血管性浮腫など)

    急性蕁麻疹単独か、アナフィラキシー(診断基準1・2)を満たすかを最初に切り分けることが、外来対応の分岐点になる(出典2)。

    3. 検査
    • 必要:
    • 診断は臨床所見のみで可能。アナフィラキシー診断基準・蕁麻疹の病型分類とも臨床所見ベースであり、検査は必須ではない。
    • アナフィラキシー疑いで全身状態が不安定な場合、初期対応と並行して全身状態把握のための検査(血算、血液ガス分析、CRP、一般生化学検査など)を行う(出典1 図5・12)。
    • 誘因(アレルゲン)確定のための検査は急性期の検査ではなく、アレルギー専門医への経過観察受診時(発症後3〜4週間が目安)に血清アレルゲン特異的IgE抗体・皮膚テストで行う(出典1)。
    • 蕁麻疹で細菌・ウイルス感染の合併が疑われる場合は、一般的な生化学検査を行ってもよい(出典2)。
    • 可能な施設では総トリプターゼ値を測定してもよい(発症15分後から3時間以内の値とベースライン値を比較)。ただし正常値でもアナフィラキシーを否定できない(出典1)。
    • 不要・過剰になりがち:
    • 典型的な蕁麻疹以外に身体症状がなく治療への反応性もよい場合、I型アレルギーのルーチン検査を行う意義は認められない(蕁麻疹診療ガイドライン2026 CQ1: 推奨なし、エビデンスレベルB)。
    • 蕁麻疹症例に対して一般的な生化学検査等をルーチンで行うべきではない(同CQ2・CQ3: 推奨なし、エビデンスレベルC〜B)。詳細な病歴からI型アレルギーが強く疑われる場合のみ、個々の事例に適した検査を選択する(出典2)。
    4. 治療

    第一選択

    • アナフィラキシー(診断基準1・2のいずれかを満たす、または強く疑う場合): アドレナリン筋肉注射が第一選択。大腿部中央の前外側に0.1%アドレナリン(1:1,000、1mg/mL)0.01mg/kgを直ちに筋注する(最大量は成人0.5mg、小児0.3mg)。体重換算の考え方は「体重1kgあたり0.01mg、最大総投与量0.5mg」であり、体重区分ごとの目安(10kg以下の乳幼児・1〜5歳・6〜12歳・13歳以上)がガイドラインの推奨用量表に示されている(出典1 表13・14)。アドレナリン使用に絶対禁忌は存在しない(心疾患・高齢者・妊婦を含む)。血中濃度は筋注後10分程度で最高、40分程度で半減するため、効果が不十分・症状が治療抵抗性を示す場合は5〜15分毎に反復投与する(ほとんどの患者は1〜2回の投与で効果が得られる)。体位は原則仰臥位(呼吸困難があれば座位、意識消失なら回復体位、妊娠中なら左側臥位)とし、急に立位・坐位をとらせない(empty vena cava/empty ventricle syndromeで数秒〜数分で急変しうる)。血圧低下が明らかでなくてもトレンデレンブルグ体位が望ましく、著明な血圧低下がある場合は下肢挙上が短時間でも血圧上昇に効果がある(出典1 p.20)。必要に応じて酸素投与(6〜8L/分)、静脈路確保・輸液(血圧低下時、細胞外液を成人5〜10mL/kg・小児10mL/kgで急速投与)を行う(出典1)。蕁麻疹・掻痒を伴わないHAE等ブラジキニン起因性の血管性浮腫はアドレナリンに反応しないため、反復投与しても喉頭浮腫が改善しない場合は反復を漫然と続けず、C1-INH製剤・専門医へのエスカレーションに切り替える(1章参照)。⚠要医師確認(出典9・10)
    • 蕁麻疹単独(アナフィラキシーの徴候がない場合): 非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬の内服が第一選択。急性特発性蕁麻疹では診断確定後に数日〜1週間程度内服を継続し、症状消失を確認できれば内服中止する(「漸減」というステップは慢性特発性蕁麻疹〈発症後6週間超〉のフローにのみ規定されており、急性例では用いない。蕁麻疹診療ガイドライン2026 図3)。小児の蕁麻疹治療では、副作用リスクの高い第1世代抗ヒスタミン薬・経口ステロイド・それらの合剤の使用は可能な限り避ける(蕁麻疹診療ガイドライン2026 行動指針4.2)。

    第二選択・無効時

    • 蕁麻疹単独: 症状が重篤で抗ヒスタミン薬単独での制御が困難な場合に限り、有害事象に注意しながら、できる限り短期間(3〜7日程度)ステロイドを併用してもよい(CQ7: 推奨なし、エビデンスレベルC。抗ヒスタミン薬単独と差がなかったとする報告もあり、長期的有用性は確立していない)。抗ヒスタミン薬に抵抗し、感冒症状を伴う細菌感染症の併発が疑われる場合は抗菌薬の併用を試みてもよい(CQ8: 推奨なし、エビデンスレベルC)(出典2)。
    • アナフィラキシー: H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚・粘膜症状を緩和するが、他の症状(呼吸器・循環器症状)への効果は確認されておらず、単独では救命効果がない(推奨度C)。グルココルチコイドは作用発現に数時間を要し、遷延性・二相性のアナフィラキシーの防止・緩和に使用されるが、その効果は立証されていない。アドレナリンに反応しない患者、特にβブロッカー投与中の患者にはグルカゴンが有効な可能性がある(1〜5mg、小児20〜30μg/kg、最大1mgを5分以上かけて静注)(出典1 p.21「アドレナリン使用における注意」)。

    やってはいけない/非推奨

    • 抗ヒスタミン薬・ステロイドをアドレナリンの代わりに先行投与し、様子を見る対応(第二選択薬であり、投与の遅れが死亡リスクに直結する。医療事故調査データでも指摘されている)。
    • H1およびH2抗ヒスタミン薬の急速静注(血圧低下を引き起こす可能性がある)。
    • グルココルチコイドの急速静注(喘息発作等の過敏症状発現の可能性があり好ましくない)。
    • 症状出現時に急に立位・坐位をとらせる(体位変換をきっかけに急変するリスク)。
    • 蕁麻疹単独例へのI型アレルギー検査・一般生化学検査のルーチン実施(3章参照)。
    • HAE等ブラジキニン起因性の血管性浮腫に対してアドレナリンを漫然と反復投与し、C1-INH製剤・専門医紹介のタイミングを逃す(1章・本章「第一選択」参照)。⚠要医師確認(出典9・10)

    (出典1・2)

    5. 再診・帰宅指導・保護者説明
    • 緊急受診(救急要請)のサイン(保護者に伝える): 呼吸が苦しそう・声がかすれる・犬が吠えるような咳、ゼーゼーする呼吸・息がしにくい、繰り返し吐く・我慢できない強い腹痛、唇や爪が青白い、脈が触れにくい・不規則、意識がもうろうとしている・ぐったりしている、尿や便を漏らす。これらの症状が一つでもあれば、外来再受診を待たず直ちに119番通報し、エピペン処方があれば救急要請と並行して使用する。 これらは「一般向けエピペンの適応」基準(後述)と同一の項目であり、保護者説明とエピペン使用基準を揃えることで実務上の一貫性を保てる(出典1)。
    • 経過の見通し(二相性反応): 二相性反応は成人の最大23%、小児の最大11%のアナフィラキシーに発生し、その約半数は最初の反応後6〜12時間以内に出現する。アドレナリン投与の遅れ(発症から30分以上)は二相性反応の出現に関連する。遅延反応でアドレナリン投与を要したのは9.2%(中央値1.7時間、14分〜30時間)で、76%は4時間以内だが7.4%は4〜10時間のうちに重篤な反応を来している(出典1)。このため、症状消失後も4〜6時間の院内観察を目安とし、心血管疾患の合併・重症だった場合・医療アクセスの悪い遠方への帰宅など二相性反応のリスクが高い場合は最大6〜24時間の観察を検討する。
    • 紹介・入院の閾値: グレード3(重症)、二相性反応リスクが高い症例(重症だった・心血管疾患合併・気管支喘息〈特にコントロール不良〉合併・βブロッカー内服中・遠方在住等)は入院または経過観察の延長を検討する。基本的な初期対応で反応が乏しい場合は、救急医療・救命救急・麻酔科蘇生専門チームの治療に迅速に委ねる(出典1・8)。
    • エピペン処方と保護者・学校への指導: アナフィラキシー既往のある患者には、退院時にアドレナリン自己注射薬(エピペン)の処方・使用方法の指導、アナフィラキシーへの対応マニュアル、アレルギーを他人に伝えるカード(財布に入れる等)を準備する。重症化リスクが高い患者(喘息合併、重篤な既往、遠方居住等)には、初回投与後5〜15分で症状が改善しない場合に備え、エピペン2本の処方・携帯(外出用と学校・自宅据置用)を検討し、改善なければ2本目を同手順で使用するよう説明する(出典12)。
    • 一般向けエピペンの適応(日本小児アレルギー学会、アナフィラキシー対応ワーキンググループ策定): エピペンが処方されている患者でアナフィラキシーショックを疑う場合、次の症状が一つでもあれば使用すべきである。消化器症状(繰り返し吐き続ける、持続する強い[我慢できない]腹痛)、呼吸器症状(のどや胸が締めつけられる、声がかすれる、犬が吠えるような咳、持続する強い咳込み、ゼーゼーする呼吸、息がしにくい)、全身の症状(唇や爪が青白い、脈を触れにくい・不規則、意識がもうろうとしている、ぐったりしている、尿や便を漏らす)(出典1 表20)。
    • 使用方法: 太腿の前外側に垂直に先端を「カチッ」と音がするまで強く押しつけ、太ももに押し付けたまま数秒間待ってから抜き取る(衣服の上からでも可)。添付文書(患者向医薬品ガイド)は具体的な秒数を規定せず「数秒間待ち」とのみ記載しており、「5秒間」という特定の秒数は一次資料に基づかないため削除した(出典13)。注射後はカバーの状態を確認し、救急車を呼んで医療機関を受診する(出典1)。
    • 学校での対応: 児童生徒本人が自ら注射できない状況にある場合、その場に居合わせた教職員が代わりに注射することは、医行為を反復継続する意図がないと認められるため医師法違反にはならないとされる(出典11。旧版は出典5〈日本小児アレルギー学会「一般向けエピペンの適応」〉を引用していたが、当該ページに医師法・法的根拠の記載はなく引用元の取り違えだったため文部科学省ガイドラインに差し替えた)。緊急時の教職員の役割分担(観察・管理監督・連絡・準備・救急車の誘導)を園・学校側とあらかじめ決めておくよう保護者・学校双方に伝える。
    • 食物アレルギー精査への橋渡し: 原因アレルゲンを確定するため、発症後3〜4週間を目安にアレルギー専門医へ紹介し、血清アレルゲン特異的IgE抗体・皮膚テストを実施する。検査項目(個別選択13項目までかセット検査か)の選び方は「食物アレルギー検査の選び方」(同フォルダ内、外来編)を参照。
    • FDEIA(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)の生活指導: FDEIAの診断・疑いがある患者には、原因食物摂取後2〜4時間は運動を避けること、NSAIDs内服・飲酒・睡眠不足・体調不良時に原因食物摂取と運動を重ねないことを保護者・本人に説明する(促進因子: 運動・NSAIDs・アルコール・感染・情動ストレス等)(出典1)。
    6. 院内ローカルルール(愛育での運用)
    • (要確認)愛育病院でのエピペン採用状況・院内在庫・保管場所。
    • (要確認)アナフィラキシー対応の院内緊急時プロトコル(文書化・定期実地訓練)の有無。
    • (要確認)アレルギー専門医(誘因確定検査・食物経口負荷試験)への院内・院外紹介ルート。
    • (要確認)当直・時間外でのアナフィラキシー対応体制、上位施設(救命救急)への搬送基準。
    • (要確認)生活管理指導表(アレルギー疾患用)の学校・保育所提出フローの院内運用。
    7. 出典
    1. 一般社団法人日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(2022年8月31日発行、2023年3月1日修正第2刷)
    1. 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」日本皮膚科学会雑誌 136(4): 375-493, 2026(令和8)
    1. World Allergy Organization anaphylaxis guidance 2020(アナフィラキシーガイドライン2022の診断基準はWAO 2020改訂に準拠、3項目から2項目へ集約)
    1. Yanagida N, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2017;172:173-82(アナフィラキシー重症度分類の出典、アナフィラキシーガイドライン2022 表11に引用)
    2. 一般社団法人日本小児アレルギー学会「一般向けエピペン®の適応」
    1. 学校での食物アレルギー・アナフィラキシー対応(学校保健ポータルサイト)
    1. 平成30年1月 医療事故調査・支援センター/一般社団法人日本医療安全調査機構「医療事故の再発防止に向けた提言 第3号」(アナフィラキシーに係る死亡事例の分析、アナフィラキシーガイドライン2022内に引用)
    2. 医学界新聞「ピットフォールにハマらないER診療の勘どころ(6)」(気管支喘息合併がアナフィラキシー重症化・致死のリスク因子である旨の解説)
    1. 国立成育医療研究センター「血管性浮腫・遺伝性血管性浮腫(HAE)」(HAEがアドレナリン等の通常治療に反応しないことの解説)
    1. 一般社団法人日本補体学会「遺伝性血管性浮腫(HAE)診療ガイドライン改訂2023年版」
    1. 文部科学省・公益財団法人日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(平成20年3月作成、令和元年度改訂。教職員による代理注射が医師法違反にならない旨の法的整理の一次出典)
    1. 一般社団法人日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(アドレナリン筋注は効果不十分なら5〜15分毎に反復投与の記載。自己注射薬の適応・処方の項も参照)
    1. エピペン患者向医薬品ガイド(2024年7月改訂、製造販売元: ヴィアトリス製薬合同会社。PMDA掲載)。「太ももに押し付けたまま数秒間待ち」とのみ記載され、具体的な秒数(5秒・10秒等)は規定されていないことを本ファイル執筆時にWebFetchで確認した。

    ※ 点数・GLは改定される。運用前に最新版を確認。特に蕁麻疹診療ガイドラインは2026年4月に第4版へ全面改訂されたばかりであり、CQ番号・推奨度は今後の正誤表・改訂に注意する。

    検証・修正ログ(2026-07-30)

    敵対的検証(10.json、11件の所見)を反映。反映数=11、うち医師確認事項として明示=2。

    安全側に追記した項目(1・4・5章):

    • HAE等ブラジキニン起因性血管性浮腫はアドレナリン・抗ヒスタミン薬・ステロイドいずれにも反応しないため、反応しない喉頭浮腫でC1-INH製剤・専門医へエスカレーションする一文を追加(⚠要医師確認・critical)。
    • 気管支喘息(特にコントロール不良)合併を重症化リスク因子として1章・5章に追加。
    • 乳児の非典型的アナフィラキシー像(哺乳不良・啼泣・活気低下・嗜眠・蒼白のみ)を1章に追加(⚠要医師確認)。
    • エピペン2本携帯(外出用・据置用)の検討を5章に追加。
    • 「再受診すべきサイン」の見出しを「緊急受診(救急要請)のサイン」に改め、119番通報の明文を追加。
    • FDEIA患者向けの運動制限・増強因子回避の生活指導を5章に追加。
    • 体位にトレンデレンブルグ体位・下肢挙上の考慮を4章に追加。

    一次資料を再確認して修正した項目(dose/factual):

    • エピペン使用時の保持秒数: 「5秒間」という記載を削除し、添付文書(患者向医薬品ガイド2024年7月改訂)の「数秒間待ち」に一本化。WebFetchで一次資料を確認した結果、検証者が提案した「10秒」という具体的秒数も一次資料には見当たらず、原文の表現「数秒間」に忠実な記載へ修正した(本文中に注記済み)。
    • グルカゴンの出典表示を「出典1 表15」から「出典1 p.21(アドレナリン使用における注意)」に修正。
    • 急性特発性蕁麻疹の内服終了手順を「漸減中止」から「内服中止」に修正し、「漸減」は慢性特発性蕁麻疹のみに限定。
    • 教職員のエピペン代理注射が医師法違反にならないことの出典を、記載内容のない出典5から文部科学省ガイドライン(出典11)に差し替え。

    残る要確認点(医師確認事項に集約済み・再掲):

    1. HAE疑い時のエスカレーション先(C1-INH製剤の院内採用・紹介ルート)は愛育病院の実運用が未確認。
    2. 乳児の非典型的アナフィラキシー像の文言・トリアージへの落とし込み方が実診療に合うか要確認。

    検証していない/未反映の残課題:

    • 6章「院内ローカルルール」の(要確認)項目群は本ラウンドでは変更せず、既存のまま。
    • 本ファイルは引き続き「下書き(要・本人確認)」。上記2点の医師確認事項を含め、公開・運用前に岡本の確認を要する。

    同じ場面のシート

    ほかに開く

    ↑↓ 移動 / Enter 開く / Esc 閉じる