ウイルス抗原迅速検査(ロタ・ノロ・アデノ)
| 項目 | 内容 |
|---|
| 検体 | 糞便(少量採取、綿棒法など) |
| 所要時間 | 15〜20分程度 |
| ロタ・アデノ同時検出キット | 市販あり。同時実施時は主たる検査のみ算定 |
| ノロウイルス抗原キット | 2012年に保険収載。感度36〜80%、特異度47〜100%と報告の幅が大きく、陰性でもノロウイルス感染を否定できない[1] |
| 保険適用 | ロタ・アデノ: 3歳未満・65歳以上/ノロ: 上記1.の①〜⑤のいずれかに該当する場合のみ |
診断の基本はあくまで臨床経過。JAID/JSC 2015は「流行時期に全員に検査を行い原因微生物を同定する意義は少ない」「多くは病歴からの臨床診断を行う」としている[1]。集団発生(アウトブレイク)の臨床診断にはKaplan Criteria(①有症状例の半数以上で嘔吐、②平均潜伏期24〜48時間、③平均有症状期間12〜60時間、④便培養から原因細菌が検出されない、の4項目)が参考になる[1]。
便培養
- 目的菌: カンピロバクター属(小児の細菌性腸炎で最も頻度が高い)、非チフス性サルモネラ属(次点)、下痢原性大腸菌(EHECを含む)、赤痢菌、エルシニア属[1]。
- 提出タイミング: 抗菌薬投与を開始する前に必ず採取する。結果判明まで数日を要するため、重症所見があれば結果を待たずempiric therapyを検討する[1]。
- 補助所見: 便グラム染色でグラム陰性らせん状桿菌を検出すればカンピロバクター感染を強く示唆する(小児639例の検討で感度92.4%、特異度99.7%)[1](JAID/JSC 2015本文p.47「V. 小児の細菌性腸炎」Executive summaryに同数値が直接記載されていることを一次PDFで確認済み。GL内の個別引用文献番号までは特定できていないが、数値の出典が[1]自体であることは確定した)。腹部エコー(腸管エコー)では、細菌性は回腸末端〜上行結腸の浮腫性壁肥厚・リンパ節腫脹、ウイルス性は小腸・大腸の腸液貯留を示す傾向がある[1]。
- EHEC(O157等)が疑われる/検出された場合は、血清型検査とベロ毒素(志賀毒素)産生の検査を追加する。感染症法の三類感染症であり、全例届出義務がある[1][5]。
CDトキシン検査(核酸検出検査)
- 対象: 2歳以上、抗菌薬投与歴あり、Bristol Stool Scale 5以上の下痢、24時間以内3回以上または平常より頻回の排便[4](提言原文でWebFetch確認済み。「Bristol Stool Scale 5以上」は原文の表記通りで誤記ではない。一般に典型的下痢便はBristol 6〜7に分類されることが多く軟便寄りの基準だが、これは提言そのものの定義であるため本稿の記載を維持する)。
- 便中CDトキシン検査(抗原法)の感度は一般に60〜80%程度(報告によっては50%未満)で、検査陰性のみで疾患を否定できない[1]。
- GDH抗原はより高感度だが、GDH陽性・トキシン陰性の場合はトキシン非産生株を検出している可能性があり、GDH単独でCDIの診断はできない[1]。
- 治療効果判定・隔離解除判定の目的で再検査してはならない。治療開始後も50%で6週間以上検査陽性が持続する[1][3]。
便潜血
- 日本で普及している免疫学的便潜血法(FIT)は、化学法と異なり食事制限が不要で、下部消化管由来のヒトヘモグロビンを検出する。
- 小児外来での位置づけは大腸癌スクリーニングではなく、肉眼的血便を伴わない消化管出血の補助的スクリーニング(貧血精査、体重増加不良、慢性下痢の評価など)が中心になる。
- 偽陰性: 上部消化管出血では胃酸によりヘモグロビンが変性し検出感度が下がる。偽陽性: 肛門部の微小な擦過出血の混入などで起こり得る。
- 便潜血陰性は「消化管出血なし」を意味するだけで、IBD等の器質的疾患そのものを否定する検査ではない(間欠的な出血・粘膜病変では陰性化しうる)。慢性下痢・体重増加不良の精査で陰性でも症状が続けば、内視鏡等の追加評価を検討する。
体重換算の考え方(用量は考え方のみ)
便培養で細菌性腸炎の起因菌が判明し抗菌薬治療を行う場合の考え方: JAID/JSC 2015はカンピロバクター腸炎の第一選択にマクロライド系を挙げているが、同じ「マクロライド系」でも薬剤ごとに用量体系がまったく異なるため一括りにしない。国内添付文書上の小児一般感染症用量は、クラリスロマイシン(CAM)10〜15mg/kg/日を2〜3回に分割経口投与[12]、アジスロマイシン(AZM)10mg/kg/日を1日1回・3日間経口投与(1日量は成人上限の500mgを超えない)[13]、エリスロマイシン(EM)25〜50mg/kg/日を4〜6回に分割経口投与[14]、とされている。EHECでのホスホマイシンは40〜120mg/kg/日を分割投与など、抗菌薬ごとに投与回数・分割数も異なる[1]。実際の投与量・投与判断(薬剤選択を含む)は個々の症例で主治医が決定する。