治療は重症度別アルゴリズムに沿って段階的に行う。各段階で3〜5日投与し、改善なければ次段階へ。抗菌薬使用前に細菌学的検査を実施し、選択・変更の参考にする。経過観察は初診時より3週間までを目安とする。
軽症(5点以下)
- 抗菌薬非投与で3日間経過観察(自然経過の観察を推奨。推奨の強さ: 推奨、エビデンスの質: B)
- 改善なければ→ 第一選択: アモキシシリン(AMPC)高用量、3〜5日投与
- なお改善なければ→ 原因菌・感受性を考慮し、CVA/AMPC(クラブラン酸/アモキシシリン 1:14製剤)またはCDTR-PI(セフジトレン ピボキシル)高用量を3〜5日投与
中等症(6〜11点)
⚠要医師確認(下記アルゴリズムはGL2024 p.86-88のアルゴリズム図に基づき中等症・重症を分離修正済み。院内採用前にGL原本と照合すること。医師確認事項1参照)。
- 第一選択: AMPC高用量を3〜5日投与。鼓膜切開の適応を検討。
- 第二選択(無効時): AMPC高用量/CVA/AMPC(1:14)/CDTR-PI高用量のいずれかを3〜5日投与。鼓膜切開の適応を再検討。
- 第三選択(なお無効時): CVA/AMPC(1:14)/CDTR-PI高用量/TBPM-PI(テビペネム ピボキシル)常用量/TFLX(トスフロキサシン)常用量のいずれかを3〜5日投与。
重症(12点以上)
⚠要医師確認(同上)。
- 第一選択: AMPC高用量、またはCVA/AMPC(1:14製剤)を3〜5日投与。鼓膜切開の適応を検討。
- 第二選択(無効時): CVA/AMPC(1:14)/CDTR-PI高用量/TFLX常用量のいずれかを3〜5日投与(AMPC高用量は含めない=既に無効だった薬剤を再掲しない)。鼓膜切開の適応を再検討。
- 第三選択(なお無効時): 経口ではTBPM-PI高用量(中等症の常用量とは区別。投与期間は7日以内目安)またはTFLX常用量のいずれかを3〜5日投与(CVA/AMPC・CDTR-PIは重症の第三選択には含めない)。または以下の静注抗菌薬を3日間点滴静注:
- ABPC(アンピシリン)150mg/kg/日 分3
- CTRX(セフトリアキソン)60mg/kg/日 分2または分1(新生児は50mg/kg/日以下)。高ビリルビン血症を伴う未熟児・新生児には禁忌(核黄疸リスク)。カルシウム含有製剤・輸液と同一経路での同時投与も禁忌(結晶析出による死亡例報告あり)。
すべての場面で鼓膜切開の適応を検討する条件: 高度の鼓膜膨隆所見がある場合/適切な抗菌薬治療を行っても鼓膜異常所見が改善しない、あるいは悪化する場合。鼓膜切開が可能な耳鼻咽喉科医との連携が必要(推奨の強さ: 推奨、エビデンスの質: C)。
- 体重換算の考え方(個別処方値は書かない):
- AMPC(アモキシシリン): 高用量が第一選択の中心。1回あたり・1日あたりの上限(GL規定の投与量上限): 1回45mg/kg、1日90mg/kgを超えない。通常量(45mg/kg/日)ではなく高用量(80〜90mg/kg/日相当)とする根拠が本邦の肺炎球菌・インフルエンザ菌の薬剤耐性率にある。
- CDTR-PI: 1回200mg、1日600mgを超えない。
- TBPM-PI: 1回300mg、1日600mgを超えない(中等症・重症のみ、投与期間は7日以内を目安)。
- TFLX: 1回180mg、1日360mgを超えない。
- 抗菌薬投与時の下痢予防として耐性乳酸菌や酪酸菌製剤の併用を選択肢とする(GL根拠は抗菌薬投与時のみ。非投与・経過観察時への適用はGL記載なし)。
- 段階移行の考え方: 上記アルゴリズムの段階的なステップアップを参照。抗菌薬投与後に臨床症状が悪化する場合は抗菌薬の変更を考慮。
- 抗菌薬選択の前に必ず確認:
- 薬剤アレルギー歴(薬剤名・反応内容)。βラクタム系(ペニシリン系・セフェム系)アレルギーの既往がある場合は当該系統薬(AMPC・CVA/AMPC・CDTR-PI・TBPM-PI・ABPC・CTRXなど)を使用しない(GL2024 p.36 表13/p.56 CQ3-1 例外規定)。
- やってはいけない/非推奨:
- 耳痛(鎮痛)のみを目的とした抗菌薬投与は推奨しない(鎮痛薬としてはacetaminophen 10〜15mg/kg頓用が選択肢)。⚠要医師確認(GL本文に根拠なし・一般小児科原則として検討候補): アスピリンは小児のウイルス性疾患合併時にReye症候群のリスクがあるため使用しない旨を、保護者説明資料に加えるかどうかは岡本判断(医師確認事項3参照)。
- 抗ヒスタミン薬は急性中耳炎に無効であり投与しない(推奨の強さ: 強い推奨、エビデンスの質: A)。発熱児への不要な抗ヒスタミン薬投与は小児急性脳症のリスクとの関連が指摘されており特に避ける(GL2024 p.73-74 CQ3-7)。
- 鼓膜穿孔のない症例への点耳薬使用(無効であり非推奨)。点耳薬は鼓膜換気チューブ留置など中耳腔に薬液が十分到達可能な症例にのみ推奨。点耳薬を選択する場合でも、アミノグリコシド系・抗真菌薬含有製剤は内耳毒性(不可逆的感音難聴のリスク)のため使用しない(GL2024 CQ3-6 p.72 註)。
- CDTR-PI・TBPM-PIなどピボキシル基を有する抗菌薬の使用時は、二次性低カルニチン血症の発症に十分注意する。特に経口摂取不良・絶食時間延長のある児で低血糖・低カルニチン血症のリスクが高く、投与開始翌日からの重篤な低血糖発症例も報告されている(PMDA「ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症、重篤な低血糖について(続報)」2026年6月30日付。2019〜2026年5月で23例集積、死亡等の不可逆的転帰例あり)。意識障害・活気不良・けいれん等の低血糖症状に注意し、保護者にも説明する。