脱水と水分補給(経口補水・点滴)

脱水と水分補給(経口補水・点滴)

消化器β版・逐条レビュー継続中

2026-07-31更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

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30秒要約

  • 脱水と水分補給(経口補水・点滴)。家族説明と同じ受診サインで切る。
  • まず毒性・気道・循環を見る。迷ったら上級医。
  • 家族には説明ページを渡し、様子見の自己判断を止めさせる。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
緊急ぐったりして、呼びかけへの反応が乏しい家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急半日以上おしっこが出ていない(おむつが長時間乾いたまま)家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日唇や口の中がカラカラに乾いている家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日手足が冷たい、顔色が悪い、脈が速い家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日血の混じった便(血便)が出た家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急何度も吐いて、水分がほとんど入っていかない家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日けいれんを起こした、体をつっぱらせる、ぼーっとして反応が鈍いなど、いつもと様子が明らかに違う家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. ABC と毒性を先に見る。
  2. 上のレッドフラグで 119 / 今日受診 / 説明して帰宅 を分ける。
  3. 検査・薬は施設プロトコル。用量は書かない。
  4. 家族説明を渡す。

家族に渡す一文

この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。
https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/脱水と水分補給(経口補水・点滴)について_患者説明_2026-07-30.html

エスカレーション

  • レッドフラグ、判断に迷う → 上級医

出典

  • Family Guide oral-rehydration と整合

計算

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
判定

脱水の簡易評価(外来4項目)

該当0項目: この簡易評価では5%以上の脱水は示唆されない(臨床像で再評価)

体重減少率9%超、またはショック/プレショック徴候があればこの評価に依らず重度脱水として経静脈輸液を優先(本シート§4参照)。

いつ使う

外来での急性胃腸炎などの脱水程度の当たり付け。4項目中2項目以上の該当で体重の5%以上の脱水が示唆される(厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引きの簡易評価)。

落とし穴
  • 2項目未満でも脱水は否定されない — 経口摂取・尿量・経過と合わせて判断する
  • 詳細な重症度分類はCDS(4項目0〜8点: 軽度1〜4点/中等症〜重症5〜8点、小児急性胃腸炎診療GL2017)を併用
次の一手

評価結果に応じて経口補水療法(ORT)または輸液へ(本シート§4と「脱水と水分補給」シート参照)。嘔吐でORTが進まない場合の制吐薬の考え方は詳細リファレンス参照。

出典

厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」(4項目中2項目該当で体重5%以上の脱水が示唆)/日本小児救急医学会「小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017」/Friedman JN, et al. J Pediatr 2004(Clinical Dehydration Scale)。URLは本シート詳細リファレンスの出典参照。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

計算

ORS補正量の目安(4時間)

kg

重症(頻脈・末梢冷感・傾眠〜意識障害・ショック徴候)は経静脈輸液を優先 — この計算の対象外(本シート参照)。

いつ使う

急性胃腸炎などの軽症〜中等症脱水の欠乏量補正。ORSが第一選択(軽症・中等症とも)。数値は体重減少%に対応する目安(乳児: 軽症5%=50mL/kg・中等症10%=100mL/kg/年長児: 軽症3%=30mL/kg・中等症5〜6%=50〜60mL/kg)。

落とし穴
  • 乳児と年長児で同じ「軽症」でも補正量が異なる(体液組成の差)
  • NICEは年齢・軽重を区分せず「臨床的脱水あり」で一律50mL/kg(4時間)+維持量の簡略設計 — どちらの設計で運用するかは施設判断
  • 高Na血症性脱水(易刺激性・筋緊張亢進・けいれん)は急速補正を避け別管理
次の一手

4時間補正後に再評価→是正されていれば通常の食事・水分へ。進まなければ点滴適応の判断へ(本シート§4)。

出典

小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017/NICE NG29/MSD Manual Professional(年齢別区分・Finberg分類由来)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

計算

輸液維持量(Holliday-Segar)

kg

等張液を第一に考える。低張液は医原性低Naのリスク。新生児(生後28日未満)は対象外。個別処方ではない。

いつ使う

点滴が必要になった場合の維持輸液量。Holliday-Segar式は古典的な出発点(個別処方箋ではなく考え方の例示)。最初の10kgまで100mL/kg、次の10kg(11〜20kg分)+50mL/kg、20kgを超える分+20mL/kg。

落とし穴
  • これは量の出発点であり、個別の処方ではない
  • Holliday-Segar式は「量」の計算式であって輸液の種類を規定しない。従来セットで使われてきた低張液(1/3〜1/4生食相当)は、嘔吐・疼痛・脱水による非浸透圧性ADH分泌と重なると医原性低Na血症・けいれんのリスクを上げる
  • AAP 2018: 生後28日〜18歳で維持輸液を要する患者には等張液を第一選択
  • 現代は「Holliday-Segar算出量をそのまま入れる」運用ではない。国内総説も「Holliday-Segar式に基づく従来の低張液から、より制限した輸液量での等張液選択が主流になっている」としている。高ストレス下の小児では算出量の1/3〜1/2に制限する提案もある
  • この式には上限が組み込まれていない。体重が大きいほど式をそのまま延長すると非現実的な量になる。院内の上限を決めておくこと
  • 除外(適用範囲外): 神経外科疾患、先天性/後天性心疾患、肝疾患、悪性腫瘍、腎機能障害、尿崩症、大量の水様性下痢、重度熱傷、生後28日未満またはNICU、18歳超
  • K追加は排尿(尿量)を確認し、腎機能に問題がないことを確認したうえで
  • 新生児(生後28日未満)は対象外
次の一手

維持輸液が必要なら等張液を第一に考える。Kは尿量確認と腎機能OKのうえで追加。経口摂取が可能になれば経口へ。

出典

Holliday-Segar式/坂井 2025 日小児腎臓病学会誌/Feld et al. AAP 2018 Pediatrics。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

計算

初期輸液・ボーラス量(場面別)

kg

場面

この道具の目的は量を出すことではなく、場面を取り違えないこと。同じ「初期輸液」でも 10mL/kg と 20mL/kg が場面によって使い分けられており、量そのものよりどの場面かの判断が先にある。とくにショックでないDKAに 20mL/kg を急速投与すると脳浮腫のリスクを上げる。実施は院内プロトコルに従い、医師が判断する。

いつ使う

体重と場面を選ぶと、正本が挙げている初期輸液の量と投与時間が出る。「ショックなら20mL/kg」と丸暗記していると、DKA・アナフィラキシーで量も時間も変わることを見落とす。

落とし穴
  • 10mL/kg と 20mL/kg は矛盾ではなく場面の違い。どちらか一方を既定値として覚えない
  • 敗血症性ショックでは J-SSCG2024 が10〜20mL/kg ずつ反復し、反応を評価する形をとる。1回で決め打ちにせず、輸液過剰の所見や反応の鈍化があれば中断を検討する
  • アナフィラキシーのガイドラインは成人量(総量1〜2L)が先に目に入る書きぶりになっている。「1〜2L」は成人の総量目安で、小児にそのまま当てはめない
  • 胃腸炎で使う「下痢1回ごとに10mL/kg追加(上限240mL/回)」は経口の追加量であって、ここでいう静脈内ボーラスとは別物
  • 維持輸液(Holliday-Segar)とボーラスは別の話。ボーラス後の維持は別に計算する
出典

ショック時20mL/kg=本サイト「経口補水・外来輸液」「血液ガスの読み方」。敗血症性ショック10〜20mL/kgずつ反復=J-SSCG2024 小児章。アナフィラキシー小児10mL/kg=日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022(図12ステップ8・p19、「4 症状別の治療/補液」p24)。DKA=ISPAD 2022 および 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 2024コンセンサスガイドライン第9章。ショックでない重症発熱性疾患にルーチンのボーラスを行わない、および最初の1時間の合計上限(40〜60mL/kg)=JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 p.200-201「8 ショック」(原文PDFで直接確認・2026-09-13)。いずれも本サイトの該当シートに一次出典のURLを載せている。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

処方

処方

処方の考え方

脱水なし〜中等症は経口補水療法(ORS)が第一選択。点滴は重症脱水・経口摂取が実質的に不可能・経口補水が失敗(持続嘔吐・臨床的悪化)のときに限る。維持輸液が必要なときは低張液でなく等張液を第一に考える(医原性低Na血症・けいれんのリスク)。

脱水の程度

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

詳細リファレンス8章(正本より)

出所: 正本「経口補水・外来輸液_2026-07-30.md」(起草→敵対的検証→一次資料照合→独立再検証済み)。同期日: 2026-08-14。
用量・基準は「考え方」の記載であり、適用前に一次資料と院内採用・添付文書を確認すること。「医師確認事項」に残る論点は未確定。

  • 区分: 外来編/外来手技・治療
  • 記録日: 2026-07-30
  • 状態: 下書き(要・本人確認)
  • 対象: 小児外来(愛育病院)

⚠ 本ファイルはAIが最新の文献・ガイドラインをWeb検索して起草した下書き。最終的な臨床判断は医師(岡本)が確認して確定する。用量は体重換算の「考え方」のみ・個別患者値や患者情報は書かない。

0. 要点(3行)
  • 脱水なし〜中等症は経口補水療法(ORS)が第一選択。点滴は「重症脱水」「経口摂取が実質的に不可能」「経口補水が失敗(持続嘔吐・臨床的悪化)」のときに限る[1][2][3]。
  • 維持輸液が必要になったら等張液を第一に考える。Holliday-Segar式由来の伝統的な低張輸液は、嘔吐・疼痛・脱水自体による非浸透圧性ADH分泌と重なって医原性低Na血症・けいれんのリスクを上げる[7][8]。
  • 少量頻回の指導は「少しずつ」で終わらせず、具体的な回数・量(5mLを5分おき→耐容性を見て漸増、下痢1回ごとに10mL/kg追加)まで伝える[4]。オンダンセトロンは海外では一般的だが、日本では胃腸炎への適応がなく適応外使用であることを前提に判断する[9]。
1. いつ使う・いつ使わない(適応/非適応)

対象年齢の注意: 本ファイルは乳児以降を想定する。新生児(生後28日未満)は脱水・輸液の評価基準が通常の乳幼児と異なり、AAP 2018年維持輸液ガイドライン[8]も生後28日未満・NICU管理下の新生児を明示的に対象外としている(PubMed要旨で確認、2026-08-01)。§2-1の重症度分類(MSD Manual[4][5]由来)も新生児での妥当性が個別に検証されたものではない。新生児の嘔吐・哺乳不良・脱水は本ファイルのフレームワークをそのまま適用せず、敗血症・先天代謝異常・先天性副腎過形成など(§3)を含め個別に評価する。

  • 使う(適応):
  • 経口摂取が可能で、脱水なし〜中等症のウイルス性・軽症細菌性胃腸炎 → まずORSトライアル[1][2]。体重減少の目安は年齢で異なる(同じ臨床重症度でも乳児は年長児より%が高く出る): 乳児は目安10%程度まで、年長児・思春期は目安6%程度までがORSトライアルの対象域(詳細な年齢別カットオフは§2-1表を参照)[4][5]。循環動態が安定していることが前提。
  • 嘔吐があっても完全に経口摂取不能でない場合 → 少量頻回のORSを継続(吐いたら5〜10分休止して再開)[4]
  • 経口補水が奏功し脱水が是正された後の維持水分 → 通常の母乳・ミルク・食事を継続、無理にORSだけに絞らない[3]
  • 使わない・過剰になりがち:
  • 軽症〜中等症なのに「念のため」「保護者が希望するから」で点滴を先行させる(ORSトライアルの省略)[1]
  • 末梢静脈確保が容易でない乳幼児で、ORSトライアルなしにいきなり点滴適応と判断する
  • 維持輸液に慣習的な低張液(1/3〜1/4生食相当)をそのまま使う(医原性低Na血症のリスク)[7][8]
  • 海外の実践だけを根拠にオンダンセトロンを安易に処方する(日本では胃腸炎への適応外)[9]
  • スポーツドリンク・果汁・炭酸飲料をORSの代替として指導する(高浸透圧・低Naで下痢を助長しうる)[3]
  • 経口摂取が再開できているのに点滴を漫然と継続する
2. 実際(読み方・基準値・手技・スケジュール等)

2-1. 脱水度の評価

最も正確なのは直近の健診体重などとの比較による体重減少%だが、外来では臨床所見からの推定が実際的。単一の所見で決めず複数所見を組み合わせる[1][2][4][5]。

体重減少%は年齢によって解釈が異なる(乳児は年長児・思春期より体内水分比率が高いため、同じ臨床重症度でも%の数値が高く出る。この年齢差の明記が本表の要点)。乳児〜幼児と年長児の中間(学童期前半)は明確な基準値がなく、臨床的に補間して判断する[4][5]。

分類体重減少(乳児)体重減少(年長児・思春期)主な所見対応の方向性
脱水なし<5%<3%ほぼ所見なし、口渇のみ経口摂取の維持、ORSは補助的に[3][4][5]
軽症目安5%(補正量の目安50mL/kg)目安3%(補正量の目安30mL/kg)軽度の口渇・粘膜のわずかな乾燥ORSが第一選択[1][2][4]
中等症目安10%(補正量の目安100mL/kg)目安5〜6%(補正量の目安50〜60mL/kg)粘膜乾燥、活気低下、尿量減少、皮膚ツルゴール軽度低下、頻脈ORSが第一選択(頻回の再評価を伴う)[1][2][4]
重症目安15%(補正量の目安150mL/kg)目安7〜9%(補正量の目安70〜90mL/kg)頻脈、末梢冷感、CRT延長、傾眠〜意識障害、尿量著減、皮膚のまだら状変化、(ショックでは)血圧低下経静脈輸液を優先、ショック評価[1][5]

※NICE[3]は上記のような年齢別・軽症/中等症/重症の4区分ではなく、「臨床的脱水あり/なし」「ショック」の簡略化した2〜3区分で運用し、脱水ありと判断した時点で一律50mL/kg(4時間)を投与する設計(§2-3参照)。本表(乳児/年長児の4区分・mL/kg対応)はMSD Manual Professional Version[4][5]に基づく古典的な年齢別分類(Finberg分類に由来)で、§2-3の「軽症50mL/kg・中等症100mL/kg」はこの表の乳児側の数値と対応している。

  • CRT(毛細血管再充満時間)は正常上限が概ね2秒とされ、延長は循環不全を示唆する補助所見(単独で確定診断にはしない)。
  • 尿量減少(おむつの重さ・排尿回数の聴取)、皮膚ツルゴール、粘膜の乾燥、意識状態・活気は保護者からの聴取と診察で複合的に評価する[4][5]。
  • 高Na血症性脱水(易刺激性、筋緊張亢進、深部腱反射亢進、けいれん)は臨床像が通常の脱水と異なり、補正速度の管理が別途必要になるため、疑ったら通常の急速補正を避ける[3]。

2-2. ORS(経口補水液)の組成と選択

ORSは腸管でのNa-グルコース共輸送を利用するため、Naとブドウ糖の比率が重要。低浸透圧ORSが標準(WHO 2002年改訂版で下痢の期間短縮・嘔吐減少が示されている)[3][4]。

項目WHO低浸透圧ORS(2002)OS-1(日本の代表的市販ORS)
Na75mEq/L50mEq/L
K20mEq/L20mEq/L
ブドウ糖75mmol/L1.8〜2.5%(約18〜25g/L)
総浸透圧245mOsm/L約260mOsm/L

日本の市販ORSはWHO処方よりNaが低め(50〜60mEq/L台)に設計されているものが多く、軽症〜中等症の維持〜補正に使いやすい設計。院内採用品の組成は§6で要確認[6]。

2-3. 経口補水量の考え方(mL/kg)

「軽症」「中等症」の境界は§2-1表の体重減少%に対応する(乳児基準:軽症=目安5%=50mL/kg、中等症=目安10%=100mL/kg。年長児・思春期では軽症=目安3%=30mL/kg、中等症=目安5〜6%=50〜60mL/kgとなり数値が異なる点に注意)[4][5]。

場面目安量
欠乏量の補正(4時間かけて、乳児基準)軽症: 50mL/kg(体重減少目安5%)/中等症: 100mL/kg(体重減少目安10%)[4][5](NICEは年齢・軽重区分をせず一律50mL/kg+維持量として設計)[3]
下痢1回あたりの追加10mL/kg(上限目安240mL/回)[4]
嘔吐がある場合の開始量5mLを5分おきから開始し、耐容性を見て漸増[4]。NICEも「頻回・少量」を明記[3]
維持(治療中の並行摂取)母乳・ミルク・普段の水分摂取は中止せず継続[3]

4時間補正後に再評価し、脱水が是正されていれば通常の食事・水分に移行。ORSでの補正が奏功しない(持続嘔吐でORSが摂取できない、臨床的に悪化)場合が「経口補水失敗」=点滴適応の目安[1][3]。

2-4. 点滴(経静脈輸液)の適応

  • 重症脱水・ショック疑い(末梢冷感、頻脈、CRT延長、意識レベル低下、血圧低下)[1][3][5]
  • 経口補水トライアルが失敗(持続する嘔吐でORS摂取が続けられない、悪化傾向)[1][3]
  • イレウス・急性腹症など経口摂取自体が禁忌な病態の合併が疑われる(このファイルのスコープ外、外科的評価へ)
  • ショックが疑われる場合の初期輸液は生理食塩水20mL/kgの急速投与が国際的な標準的な出発点[3](実施は院内プロトコル・要確認§6)

2-5. 維持輸液の考え方

点滴が必要になった場合の維持輸液量は、体重換算のHolliday-Segar式が古典的な出発点(個別処方箋ではなく考え方の例示)。

体重区分1日あたりの考え方
最初の10kgまで100mL/kg
次の10kg(11〜20kg分)+50mL/kg
20kgを超える分+20mL/kg

輸液の種類: 従来はHolliday-Segar式とセットで低張液(1/4〜1/3生食相当)が広く使われてきたが、国際的には等張液を維持輸液の第一選択とする方向へ転換している。理由は、嘔吐・疼痛・脱水自体が非浸透圧性のADH分泌を亢進させ、そこに低張液を投与すると自由水が過剰になり医原性の急性低Na血症・けいれんを起こしうるため[7][8]。米国小児科学会(AAP)2018年ガイドライン[8]は、生後28日〜18歳で維持輸液を要する患者に等張液(適切なK・ブドウ糖添加)を第一選択として推奨している。除外対象(適用範囲外)は原著要旨に基づくと「神経外科疾患、先天性/後天性心疾患、肝疾患、悪性腫瘍、腎機能障害、尿崩症、大量の水様性下痢、重度熱傷を有する患者、生後28日未満またはNICU管理下の新生児、18歳超の患者」であり(2026-08-01、PubMed要旨をWebFetchで確認・原文引用は§7[8]参照)、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は原著の除外リストに明記はないが臨床的には別プロトコルで管理するのが実務上妥当。本ファイルの想定読者(一般小児外来・新生児を除く)にはおおむね当てはまるが、腎機能障害合併例は適用範囲外である点に注意[8](※Pediatrics本誌原文は403で直接確認できず、要旨レベルの確認にとどまる)。等張液を用いる場合も、電解質(特にNa・K)の経過フォローと、必要に応じたブドウ糖・カリウムの追加は個別に判断する。カリウム追加は排尿(尿量)を確認し腎機能に問題がないことを確認したうえで行うのが原則(乏尿・腎機能障害がある状態でのK投与は高K血症のリスクを高める)。

2-6. 制吐薬の位置づけ

  • オンダンセトロン: 海外(米・英・加など)の救急外来では、持続嘔吐でORT失敗リスクのある小児に単回経口投与する運用が広がっており、嘔吐回数の減少・点滴/入院回避に有効という報告が蓄積している一方、NICE(2018年サーベイランス時点でも現行版[3]として維持・追加証拠は結論不十分と評価)は「費用対効果・安全性のさらなる検証」を研究課題として挙げるにとどめ、ルーチン使用は推奨していない[3]。日本での承認適応は注射剤で2つ——(1)抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)、(2)術後の消化器症状(悪心・嘔吐)(2022年2月改訂・第3版で効能追加)——であり、放射線治療に伴う悪心・嘔吐は適応に含まれない(同じ5-HT3拮抗薬でもグラニセトロンは放射線照射にも適応があり、オンダンセトロンとは異なる)。添付文書の小児用法・用量もこの2適応についてのみ記載があり、小児胃腸炎の嘔吐に対する使用はいずれの承認適応にも該当せず、日本では適応外[9](2026-08-01、PMDA公式添付文書〈オンダンセトロン注4mgシリンジ「マルイシ」2022年5月改訂・第4版〉をWebFetchで一次確認。旧脚注のWikipedia依存は解消)。QT延長のリスクがあり(添付文書の過量投与の項にもQTcF延長の記載あり)、脱水に伴う電解質異常(低K・低Mg)がある患児では特に注意。院内で採用・運用方針が定まっていなければ安易に導入しない。
  • ドンペリドン・メトクロプラミド: 有効性を示す報告はあるが、日本のガイドラインでもエビデンスレベルは高くないとされ一律使用は推奨されていない[2]。メトクロプラミドは錐体外路症状のリスクにも留意。
3. 鑑別・拾える疾患/注意すべき病態
  • 腸重積: 嘔吐が先行し下痢を伴わない、間欠的な啼泣・不機嫌、血便(イチゴゼリー状)→ 単純な胃腸炎として経口補水を続ける前に想起する
  • DKA(1型糖尿病の初発): 嘔吐・脱水・腹痛で来院し、Kussmaul呼吸様の頻呼吸や体重減少の既往があるケース → 血糖・尿ケトンの確認を忘れない。低張〜等張輸液の選択やインスリン管理は通常の胃腸炎プロトコルと異なる
  • 尿路感染症・腎盂腎炎: 乳児で下痢を伴わない嘔吐・哺乳不良・発熱 → 尿検査を検討
  • 幽門狭窄症(乳児早期): 噴水状嘔吐、代謝性アルカローシス・低K・低Cl血症 → 補正輸液の組成が通常の胃腸炎とは異なる
  • 中枢神経系疾患(頭蓋内圧亢進): 下痢を伴わない嘔吐、神経学的所見(大泉門膨隆、項部硬直、意識障害)→ NICEのred flagとも重なる[3]
  • 先天代謝異常・副腎クリーゼ: 特に乳児早期の反復する嘔吐・脱水・電解質異常(低Na・高K)
  • 敗血症: 発熱パターン・全身状態が「胃腸炎らしくない」場合、systemic toxicityのサインを見逃さない
  • 細菌性腸炎(血便・高熱を伴うもの、STEC/O157疑いを含む): 便培養提出の適応判断、止痢薬を避ける方針は胃腸炎全般に共通。STEC/O157感染が疑われる場合は抗菌薬投与がHUS(溶血性尿毒症症候群)のリスクを高めうるとされ、確定診断前の安易な抗菌薬投与は避け、腎機能・血算(破砕赤血球、血小板減少)のフォローを行う(NICE[3]もSTEC関連の推奨用語を最新化している)
4. 忘れがちポイント・落とし穴 ★
  • 「点滴の方が確実」という思い込み: 軽症〜中等症ではORSと経静脈輸液の脱水是正効果は同等とされ、末梢静脈確保の侵襲・合併症を避けられるORSが優先される[1][3]。保護者の希望だけで点滴に流れない。
  • 「少しずつ飲ませて」で終わる指導: 具体的な回数・量(5mL/5分おきから漸増、下痢1回ごとに10mL/kg追加)を伝えないと、保護者は実行できずORSトライアルが自然消滅する[4]。
  • 維持輸液に何となく低張液を選ぶ: Holliday-Segar式は「量」の計算式であって「輸液の種類」を規定するものではない。低張液は医原性低Na血症・けいれんのリスクがあり、国際的には等張液が第一選択に転換している[7][8]。この点は世代・研修時期によって知識が古いまま止まっていることがある。
  • 嘔吐=ORS中止と早合点する: 嘔吐後5〜10分休止して再開すれば継続できることが多く、1回吐いただけで点滴に切り替える必要はない[4]。
  • オンダンセトロンを海外文献の印象だけで処方する: 日本では胃腸炎への適応がなく適応外使用。QT延長リスク、院内方針未整備の状態での安易な導入は避ける[9]。
  • スポーツドリンク・りんごジュース・炭酸飲料をORS代わりに勧める: 浸透圧が高くNaが低いため下痢を助長しうる。母乳・ミルクは中止せず継続してよい点とセットで説明する[3]。
  • 点滴後に経口摂取が戻っているのに漫然と継続する: 経口摂取が可能になれば速やかに経口へ切り替える。
  • 体重測定なしに「脱水度%」を主観で決める: 可能なら直近の健診体重・母子手帳記載体重と比較する。ないときは複数の臨床所見(活気・尿量・粘膜・CRT)を組み合わせて推定する。
5. 患者・保護者への説明(要点)
  • 水分は「一気にたくさん」ではなく「少しずつ、何度も」。スプーン1杯(5mLくらい)から5分おきに与え、吐かなければ少しずつ量を増やす。
  • 経口補水液は常温〜少し冷たいくらいで、ゆっくり飲ませる。一気飲みは吐きやすくなる。
  • スポーツドリンク・果汁・炭酸飲料は下痢を悪化させることがあるので避ける。母乳・ミルクはやめずに続けてよい。
  • 吐いてしまっても諦めない。5〜10分休んでからまた少量から再開する。
  • 受診・相談の目安:ぐったりして呼びかけへの反応が乏しい、半日以上おしっこが出ない、唇や口の中がカラカラに乾いている、血便がある、様子がいつもと明らかに違う場合はすぐに連絡・受診する。
6. 院内ローカルルール(愛育・要確認)
  • 要確認:外来で採用しているORS製品(銘柄・Na濃度)
  • 要確認:点滴適応時の維持輸液プロトコル(採用輸液製剤の組成、開始時のNa/K濃度の目安)
  • 要確認:オンダンセトロン(または他の制吐薬)の院内使用方針・採用の有無、使用する場合の対象基準
  • 要確認:末梢静脈路確保が困難な乳幼児での対応フロー(骨髄路含む)
  • 要確認:外来点滴後に帰宅可とする基準/小児科・NICUなど入院判断への連携フロー
7. 出典(日本のGL優先・URL+版年)
  • [1] 日本小児救急医学会.エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017 第Ⅰ部 小児急性胃腸炎診療ガイドライン(2017年6月23日発行).Mindsガイドラインライブラリ掲載頁: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00577/ (2022年改訂版[2]が存在するため、運用前に学会発行の最新版原典を直接確認すること)
  • [2] 小児急性胃腸炎診療ガイドライン2022 CQ概要(つだ小児科クリニックによる要約頁、2022年版準拠): https://tsudashonika.com/disease-cat/pediatric-acute-gastroenteritis-guideline/ (※二次要約から引用、発行学会名の明記なし。2026-08-01追加確認: 日本小児救急医学会の公式ガイドライン頁(https://www.convention-axcess.com/jsep/information/guideline.html)をWebFetchで確認したところ、同学会が公開しているガイドラインは「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017(第Ⅰ部小児急性胃腸炎診療ガイドライン・2017年6月)」と「エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン改訂第2版(2022年7月・対象疾患は腸重積症で胃腸炎ではない)」の2件のみで、独立した「小児急性胃腸炎診療ガイドライン2022」は同学会公式頁上には確認できなかった。この頁が指す実体は[1]と同一の2017年版である可能性が高いが、つだ小児科クリニック頁自体に発行学会名の明記がなく完全な一致は確定できないため、なお要確認として残す)
  • [3] NICE Clinical Guideline CG84. Diarrhoea and vomiting caused by gastroenteritis in under 5s: diagnosis and management(初版2009年).Recommendations: https://www.nice.org.uk/guidance/cg84/chapter/Recommendations /Summary: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK63839/ /2018 surveillance: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK551007/2026-07-30 WebFetchで再確認: 2018年10月31日付サーベイランス判定は「更新なし・現行版(Current)を維持」で、以後はSTEC用語更新等の編集上の修正のみ。2026年時点でも同ガイダンスがCurrentとして運用されている(NICE公式サイト本体ページは403で直接確認不可、NCBI Bookshelf版サーベイランス頁で確認)。
  • [4] MSD Manuals Professional Version(日本語版)「経口補水療法」(2025年1月改訂): https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/小児における脱水および輸液療法/経口補水療法 。脱水重症度(軽症/中等症/重症)を乳児・思春期で異なる体重減少%とmL/kgに対応させる分類(Finberg分類に由来)の一次的な参照元。
  • [5] MSD Manuals Professional Version(日本語版)「小児における脱水」(2025年1月改訂): https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/小児における脱水および輸液療法/小児における脱水2026-07-30 WebFetchで確認: 乳児は軽症5%(50mL/kg)・中等症10%(100mL/kg)・重症15%(150mL/kg)、思春期は軽症3%(30mL/kg)・中等症5〜6%(50〜60mL/kg)・重症7〜9%(70〜90mL/kg)。乳児〜思春期の中間年齢は標準値が確立されておらず臨床的補間が必要、との明記あり。
  • [6] 大塚製薬工場.OS-1(経口補水液)製品情報「組成」: https://www.os-1.jp/about/component/ (院内採用ORSは§6で別途確認)。2026-07-30 WebFetchで確認: Na 50mEq/L・K 20mEq/L・Cl 50mEq/L・ブドウ糖1.8〜2.5%・浸透圧約260mOsm/L。本文記載の数値と一致(従来の「270mOsm/L系の記憶」という懸念は解消・260mOsm/Lで確定)。
  • [7] 坂井智行.小児の脱水症に対する輸液療法—生理学的根拠にもとづく考え方—.日本小児腎臓病学会雑誌 2025;38, rv.24-034. doi:10.3165/jjpn.rv.24-034 https://doi.org/10.3165/jjpn.rv.24-0342026-08-01、J-STAGE原文頁(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpn/38/0/38_rv.24-034/_article/-char/ja/)へのWebFetchに成功し一次確認(前回セッションの502エラーは解消): 著者は滋賀医科大学小児科学講座・坂井智行、日本小児腎臓病学会雑誌38巻・2025年発行。要旨は「Holliday-Segar式に基づく従来の低張液から、より制限した輸液量での等張液選択が主流になっている」「背景に嘔吐・疼痛・脱水自体による抗利尿ホルモン不適切分泌と、それに伴う医原性低Na血症のリスク」と明記しており、本文§2-5・§7[7]の引用内容と一致することを確認。
  • [8] Feld LG, Neuspiel DR, Foster BA, et al; AAP Subcommittee on Fluid and Electrolyte Therapy. Clinical Practice Guideline: Maintenance Intravenous Fluids in Children. Pediatrics. 2018;142(6):e20183083. doi:10.1542/peds.2018-3083 (等張輸液維持を推奨する国際的な代表的GL)。2026-08-01、PubMed要旨頁(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30478247/)をWebFetchで一次確認: 対象は生後28日〜18歳。除外対象は要旨原文で「Patients with neurosurgical disorders, congenital or acquired cardiac disease, hepatic disease, cancer, renal dysfunction, diabetes insipidus, voluminous watery diarrhea, or severe burns; neonates who are younger than 28 days old or in the NICU; and adolescents older than 18 years old are excluded.」(神経外科疾患・先天性/後天性心疾患・肝疾患・悪性腫瘍・腎機能障害・尿崩症・大量の水様性下痢・重度熱傷を有する患者、生後28日未満またはNICU管理下の新生児、18歳超の患者)と確認。従来本文にあった「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)」「急性期蘇生」は原著要旨の除外リストには明記がないため本文から削除・修正済み(DKAは臨床的に別プロトコルで扱う実務判断自体は妥当だが原文根拠ではない)。なお、Pediatrics本誌原文(publications.aap.org)は403で直接確認できておらず、確認は要旨レベルにとどまる
  • [9] 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).オンダンセトロン注4mgシリンジ「マルイシ」添付文書(2022年5月改訂・第4版、2022年2月改訂・第3版で効能変更): https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/730119_2391401G1045_2_042026-08-01、PMDA公式添付文書PDFを直接取得(Read)し一次確認・[要確認]解消: 「効能又は効果」は(1)抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)、(2)術後の消化器症状(悪心、嘔吐)(2022年2月改訂・第3版で追加)の2件。放射線治療に伴う悪心・嘔吐の適応記載はなし。小児用法・用量は(1)通常2.5mg/m²・(2)通常0.05〜0.1mg/kg(最大4mg)をいずれも1日1回緩徐に静脈内投与、と記載されているがいずれも胃腸炎の嘔吐は対象外。過量投与の項にQTcF延長(32mg投与時に最大平均19.6ms延長)の記載あり。本文・出典ともWikipedia依存を解消し、PMDA一次資料に置き換えた。

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