食事の工夫とお薬で、ゆっくりと良くなっていく状態です。あわてず、順を追って対応していきましょう。
「貧血」というと血液が薄くなるイメージがあるかもしれませんが、実際には赤血球(体に酸素を運ぶ細胞)を作るための材料である「鉄」が足りなくなっている状態です。これを「鉄欠乏性貧血」と呼びます。
体の中の鉄が減るときは、いきなり血液の数字が下がるわけではありません。まず体に貯めてある鉄(貯蔵鉄)が少しずつ減り、それでも足りないと血液中の鉄が減り、最後にヘモグロビン(赤血球の中で酸素を運ぶ役目をするもの)が減っていく、という順番で進みます。
ゆっくり進むぶん、初期のうちは目立った症状が出にくいのも特徴です。血液検査ではじめて気づかれることも少なくありません。
次のようなお子さんは、鉄が不足しやすいことが分かっています。
あらわれることのある様子には、顔色が悪い(蒼白)、食欲や哺乳量の低下、なんとなく元気がない・機嫌が悪い、氷や土など食べ物でないものを欲しがる、といったものがあります。ただし、症状がはっきりしなくても軽い鉄不足が起きていることもあります。
症状の強さと血液検査の数字は、必ずしも一致しません。「元気そうだから大丈夫」と自己判断せず、検査の結果と診察の説明をもとに一緒に対応方針を決めていきましょう。
食事:赤身の肉・魚・レバー・卵・緑黄色野菜・鉄を強化したシリアルなど、鉄を多く含む食品を意識してみてください。ビタミンCを含む果物や野菜と一緒にとると、鉄の吸収が良くなるといわれています。
牛乳の量:1歳未満のお子さんには母乳・育児用ミルクの代わりとして牛乳は与えません。1歳を過ぎても、目安としてコップ2杯半(500〜600mL)を超えるとやや注意が必要になり、1日700mL以上は飲みすぎの目安です。牛乳自体が悪いわけではありませんが、飲みすぎると鉄を含む食事の量が減ってしまうことがあります。
お薬:鉄を補うお薬を使う場合、量やタイミングはお子さんの体重や状態に合わせて診察で決めます。飲み始めてすぐに数字が変わるわけではなく、効果がはっきり見えてくるまでに数週間かかります。血液検査の数字が正常に戻ったあとも、体に鉄をしっかり貯めるためにさらに2〜3か月ほど続けることが多いです。自己判断でやめず、指示された期間まで飲み続けてください。
鉄のお薬を飲むと便が黒っぽくなることがありますが、これはお薬の色によるもので、多くの場合心配はいりません。
お薬の保管:鉄のお薬は、決められた量より多く飲んでしまうと具合が悪くなることがあるお薬です。色や形がお菓子に似ている製剤もあり、小さなお子さんが誤って手に取ってしまう事故が知られています。お子さん自身や、まだ小さいごきょうだいの手の届かない・目の届かない場所(高い棚や鍵のかかる場所など)に必ず保管してください。
効果は、指示された時期の採血であらためて確認します。自己判断でお薬をやめたり、量を増やしたりしないようにしてください。
Q. 貧血はすぐに治りますか?
A. 数週間から数ヶ月かけて、ゆっくり改善していくことが多いです。焦らず、指示された時期の採血で経過を確認していきましょう。
Q. 牛乳は完全にやめたほうがいいですか?
A. 完全にやめる必要はありません。目安としてコップ2杯半(500〜600mL)を超えたあたりから注意が必要になり、1日700mL以上は飲みすぎです。量を調整してみてください。
Q. お薬を嫌がって飲んでくれません。
A. 飲み方やタイミングの工夫について診察のときにご相談ください。自己判断で量を増やしたり、ごきょうだいの分と混ぜて飲ませたりはしないでください。
Q. 便が黒くなって心配です。
A. 鉄のお薬でよくみられる自然な変化で、多くの場合心配はいりません。ただし、タール状で強いにおいがある、血が混じるなど普段と様子が違う場合はご相談ください。
Q. きょうだいが誤ってお薬を飲んでしまったかもしれません。
A. 症状がなくても、様子を見ずにすぐ医療機関にご連絡ください。鉄のお薬は多く飲みすぎると具合が悪くなることがあるため、保管場所には特に注意をお願いします。
Q. 母乳だけで育てていますが大丈夫でしょうか?
A. 母乳は鉄の吸収がよい一方、含まれる量自体は多くありません。月齢に応じて、鉄を補う食事やお薬が必要かどうかを診察でご相談ください。
Q. きょうだいも同じように鉄が足りなくなりますか?
A. 体質や食事内容によって個人差があります。気になる場合は、あわせて主治医にご相談ください。