「またおなかが痛いと言っている」「何度も検査をしたのに原因がわからない」——そんなとき、保護者の方はとても不安になると思います。くり返すおなかの痛みの多くは、命に関わる病気ではなく、痛みそのものは本物です。どんな状態か、おうちでできることをまとめました。
おなかの痛みを、3か月以上、月に1回以上のペースでくり返すお子さんは少なくありません。診察や必要な検査をしても、痛みの原因になるような病気が見つからない場合、これを「機能性腹痛」と呼びます。
「機能性」というのは、「本物の病気ではない」という意味ではありません。おなかの神経が痛みを感じ取るしくみが、少し敏感になっている状態と考えられています。痛みは実際にお子さんが感じている本物の痛みであり、決して「気のせい」ではありません。
「気のせい」「わがまま」ではありません
検査で異常が見つからないと、周りから「気のせいでは」「学校に行きたくないだけでは」と誤解されやすいのですが、これは体の中で実際に起きている痛みです。この誤解自体が、お子さんを追い詰め、かえって症状を長引かせてしまうことがあります。まずは「痛みは本物だが、命に関わる病気ではない」という前提で見守っていただくことが、回復への大切な一歩です。
診断は、次のような流れで進めます。
症状の重さは、痛みの強さそのものよりも「ふだんの生活がどれだけ送れているか」で判断します。学校を休みがちになっていないか、眠れているか、不安な気持ちが強くなっていないかを、あわせて診ていきます。
治療の中心は、まず生活の工夫です。これだけで楽になっていくお子さんも少なくありません。
お薬は診察で決めます
生活の工夫だけでは十分に改善しない場合、症状のタイプや程度に応じてお薬を検討することがあります。お薬を使うかどうか、どのお薬をどれくらい使うかは、その都度医師が判断します。この資料には一般的な考え方のみを記載し、個別の投与量は記していません。ご不明な点は診察時に遠慮なくお尋ねください。
だいたい4〜8週間ほど生活の工夫を続けても学校を休みがちな状態が改善しない場合は、次のステップ(専門的な相談など)を診察でご相談します。機能性腹痛は良くなったり悪くなったりをくり返しながら、数か月から数年かけてゆっくり良くなっていくことが多く、命に関わることはありません。
ご家族に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)の既往がある場合や、おなかの手術を受けたことがある場合は、診察の際にあらかじめお伝えください。
Q. 検査で異常がないのに、なぜこんなに痛がるのですか?
A. 機能性腹痛では、おなかの臓器そのものに傷や炎症があるわけではなく、痛みを感じ取る神経のしくみが敏感になっていると考えられています。検査で異常が出ないからといって、痛みが「うそ」や「大げさ」ということではありません。
Q. このまま検査をせずに様子を見ていいのでしょうか。
A. 心配な兆候(【すぐ受診してほしいサイン】に挙げた項目)がなく、診察や基本の検査で異常がなければ、それ以上検査を重ねなくても機能性腹痛と考えて対応を進めてよい、というのが一般的な考え方です。検査を増やすことがかえって負担になることもあります。心配な症状が新しく出てきたときは、いつでもご相談ください。
Q. どれくらいで良くなりますか?
A. 経過には個人差がありますが、生活の工夫を続けることで数週間から数か月で楽になっていくお子さんが多くいます。良くなったり少しぶり返したりをくり返しながら、時間をかけてゆっくり改善していくことも珍しくありません。
Q. 学校は休ませたほうがいいですか?
A. 原則として休ませず、いつも通り登校を続けることをおすすめします。痛みを理由にした欠席が習慣になると、かえって「学校に行けない自分」への不安が強まり、症状が長引きやすくなることが知られています。つらいときは保健室で少し休むなど、学校とも相談しながら通常の生活リズムを保つ工夫をしましょう。
Q. 食事で気をつけることはありますか?
A. 自己判断でグルテンや乳製品などを長期間除去することはおすすめしません。特定の食品との関連が疑われる場合は、診察でご相談のうえ、期間を決めて試すのが安全です。
Q. お薬は必ず必要ですか?
A. まずは生活の工夫を基本とし、それだけで十分改善しないときにお薬を検討します。お薬を使うかどうかは、症状のタイプや強さ、これまでの経過をみながら診察で判断します。
Q. 中学生の娘がいます。生理の痛みとの見分け方はありますか?
A. 生理に伴う痛みは月経の時期に一致して起こることが多いですが、生理の時期と関係なく続く痛みや、片方だけの急な強い痛みは別の原因が隠れていることがあります。思春期の女のお子さんの場合、診察では生理周期との関連や初経の有無もあわせておうかがいします。気になる痛み方があれば、遠慮なくご相談ください。
Q. きょうだいにうつりますか?
A. 機能性腹痛は感染症ではないので、きょうだいや周りのお友だちにうつることはありません。